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連載

BEASTARS

2021/4/29
2期制作が決定し、公開が待ち遠しいアニメ『BEASTARS』
その1期のOPムービーをドワーフが制作したことをご存知の方は、今この連載を読んでくださっている方の中にも多いかと思います。
この連載『伊藤Pの制作よもやま話』では、プロデューサーの伊藤が担当した作品について制作当時のあれやこれやを語る・・・という企画でございまして、今後は読者の皆さまから頂いたいろんな質問にも答えていけたら良いなと思っております!
その記念すべき第1回がSNSでも反響の大きかった『BEASTARS』というわけで、早速まいりたいと思います!インタビュアーはドワーフの“中の人”西山です。


――今回、こま撮りの制作はドワーフですが、監督はサイクロン・グラフィックスの加藤さんですよね。どういう経緯で、このスタッフィングになったのでしょう。

伊藤P:そもそも加藤さんから「こま撮りでやりたい!」と声をかけていただいた感じですね。加藤さんは原作の漫画もとても大好きで思い入れも強かったようで、「レゴシを立体人形で、毛並みまで再現したい!」というところからスタートしていったように思います。

――制作をドワーフ、監督はドワーフでない方が担当することって、多いんでしょうか?

伊藤P:そうですね、良くあります。特にドワーフはCMや広告案件も多いですから、そういう案件では社外のディレクターが「こま撮りでやりたい」という企画を、ドワーフが制作として請け負うという事も多いですよね。人気のゼスプリキウイのCMなんかもディレクターは外部の方ですし。

――ご指名いただけたのは嬉しいですね!加藤さんとは、ドワーフとも長くお付き合いがあるんですよね。

伊藤P:そうですね。初めてご一緒したのはNHKの東日本大震災の復興プロジェクト『花は咲く 東北に咲く』のアニメ制作だったと思います。僕は当時はプロデューサーではなく制作(プロダクション・マネージャー)として参加していたのですが、作品のベースは2Dの作画アニメーションなんですが、作中にどーもが登場するので、そこは立体のどーもを合成したいと。そこでドワーフも制作に参加させてもらったのですが、その時から加藤さんは作画アニメの面だけでなく、実写撮影やVFXの手法にも長けた経験豊富な監督という印象でした。あと「普通のことをやってもおもしろくない」というスタンスが加藤さんらしくてかっこいいなと思いますし、『BEASTARS』のOPでもそれは表れていると思います。なんせ本編はオレンジさんの3DCGが主体のアニメーションですからね。それのOPがこま撮りって、正直ケンカ売ってるのかなと思いました笑。
でもオレンジやアニメ本編スタッフの皆さん、そして原作の板垣巴留先生からもとても好評をいただけて。それはやはりうれしかったですね。

――では内容について聞いていきたいと思います。登場キャラクターはどうやって決めたのですか?

伊藤P:最初に言ったように、まず加藤さんからこのお話をいただいた時に「レゴシの立体人形を作りたい、それでこま撮りをやりたい」というところから始まっていたので、まず主人公であるハイイロオオカミのレゴシ。そしてレゴシが想いを寄せるヒロインのウサギ・ハルの2人は登場させたい、というところからのスタートでしたね。ちなみにハルは「ネザーランド・ドワーフ」という品種でなんとなくドワーフとこの作品との縁も感じました笑
まああとは制作期間やらご予算やらもあって結果この2人のみとなった訳なんですが、それでも加藤さんはこの2人と90秒という制約の中でこの作品のテーマや魅力をぎっしりと凝縮させた仕上がりにしているなと思いました。

――なるほど。制約が多かったことも関係しているんですね。作品の中でも重要な役割を担う「ルイ」も、実は森のシーンの引きのシルエットで登場していますよね。すごく象徴的だなと思いました。中の人としては色んな事情を考えてしまいましたが、この登場のさせ方はスマートでカッコいいなと思って見ていました。

伊藤P:そうですね。レゴシ×ハル×ルイの三角関係も作品の見どころですし、まずはメインのレゴシとハルの関係性をしっかりと見せて、そして2期でも大活躍するであろうルイを象徴的にチラ見せしているのは巧いですよね。

――制作自体は期間含めどういう工程を経て完成に至ったのでしょうか。

伊藤P:ちょっと前の話ですでに記憶はおぼろげなのですが…お話自体はだいぶ早い段階から頂いていたのですが、OP主題歌の決定がギリギリまでかかっていたので、加藤さんのコンテをあげていただいてから撮影、仕上げまでは結構急ピッチだったように思います。
いま改めてスケジュールを確認したのですが、10月からの放送に向けて、
6月下旬に人形や美術の打ち合わせ→そこからおよそ1ケ月半ほどが人形制作期間→8月中旬に10日間のこま撮り撮影→その後、撮影素材のレタッチや合成、色調整などの編集作業が行われ→9月のアタマに納品。という流れで進んでいましたね。

――特に、いわゆるOPムービーENDムービーと言われるものに関する制作の流れとしては、まず第一に曲の決定がある、ということですよね。そこからコンテ作業を経て、となると、確かに制作期間の制約も大きいですね。

伊藤P:そうですね。アニメのオープニング、エンディングは90秒のMVのようなものなので音楽が無いと考えようもないですよね。僕もアニメは好きなのでちらほら見ていますが、OPはその作品の“顔”となるようなものですから力の入っているものが多い様な気がします。ただENDはというとスライドショー的なものや、主人公の走るループを使ったものなど、割と“省エネ”なものも多いですよね笑。それはそれで好きですけどね。

――人形造形ですが、ドワーフからは根岸・原田が参加していますよね。特にレゴシの植毛については、ドワーフでも初の試みだったと思います。毛の表現ってそもそも、他に方法ってあるのでしょうか?

伊藤P:ドワーフでも「どーも」や「こまねこ」などの作品に登場する人形は毛の質感や、かわいらしさを表現する為に布やフェルトなどの素材を使っていますが、レゴシのような毛足の長い人形は稀ですね。そもそもこま撮りに於いては「制御できること」、人が意図的に触らない限りは「動かないこと」が大事なので、毛の長い人形などは好まれないんです。
ですが今回はレゴシの、ハイイロオオカミのきれいな毛並みを表現したい、というところからスタートしていたので、早い段階から根岸が植毛の為の準備を進めていました。監督の加藤さんの頭の中には「ファンタスティック Mr.FOX」の人形のイメージがあったと思います。
ということで、レゴシは実際に毛を植毛していますが、それ以外の手法ですとシリコンを使って「毛のように」細かな毛並みを表現した彫刻、原型から型取りをして、「毛並みのように見せる」という表現もあるでしょうか。後者は造形としての美しさは保たれるかと思いますが、本物の毛のような滑らかな質感とはやはり違ったものにはなりますよね。

――毛の表現をするなら、植毛がベストなのでしょうか?

伊藤P:何がベストかはその時の作品全体のバランスの中で選択していくことなのでなかなか難しいですね。植毛は人形製作の時間もコストもかかりますし、毛並みにも気を遣うのでアニメ作業にも時間がかかります。ただ今回の『BEASTARS』では根岸が原作のイメージを損ねることなく素敵な立体にしてくれたと思いますし、映像の中でも月明かりに浮かぶレゴシの毛並みは本物のを毛を使わなければ出せなかった美しさだと思います。

――光に透ける毛の感じが、綺麗でした。この表現はやはり植毛でないとなし得なかったということですね。ハルの仕上がりは、レゴシの毛の質感とは異なってふわふわで可愛らしいのですが、ハルは羊毛フェルトでしょうか。レゴシとはまた違う作り方になったんでしょうか。

伊藤P:ハルはドワーフがいつもお世話になっている「人形工房」のチームに製作をお願いしました。ハルはレゴシほど毛並みも長くないので、ウサギらしい綺麗な毛の質感を感じる生地を選んで、それを貼り込んで製作しています。

――なるほど。冒頭の森の木々や月、サビの花畑と噴水のシーン、それぞれ魅力的でした。それぞれどうやって作られていったのでしょうか。

伊藤P:加藤さんが表現したかったのはまさしくこの『BEASTARS』という作品のテーマだと思うんですが、理性と本能、それと愛、ですよね。前半の月夜のシーンでは昔のドラキュラとかフランケンシュタインのような古典的なホラーの趣があります。レゴシやハルの演技も少しオーバーリアクションでちょっとコミカルにも見えるのがかわいいですよね。この前半の野生パート、本能パートを受けて、一転、華やかなお花畑で2人が踊る愛のシーンになるわけですが、ぱっと見は可愛らしくて、ハルの鼻ちょんのジャンプとかも微笑ましい限りなんですが反面、アニメや原作を見た方ならお分かりだと思うのですが、あのシーンはいわばレゴシの脳内妄想シーンで「こうなっていたかもしれない未来」の映像でもあります。一番最後の何やら陰惨なインサートカットと血走ったレゴシの目がそれを象徴しているわけですが・・・そういう映像美と視聴者の感情に訴えかけるような演出のバランスが加藤監督は見事だなあと思ってます。

――アニメーションについて伺います。アニメもやはり担当がそれぞれあったりするのでしょうか?

伊藤P:今回はそうですね、主にダンスパートと森で走るレゴシは根岸、逃げているハルは原田がそれぞれアニメをつけています。アニメーターを分ける最大の理由は撮影期間の短縮だと思いますが、メリット・デメリットありますよね。アニメーターによっては演技に差が出てしまったりもしますし、アニメーターを増やすには当然その分人形も必要になります。
今回はレゴシとハルそれぞれ単体のシーンもあったので、そのシーンを切り分けて撮影することが出来ました。
作画アニメでもそうですが、やはり動かすアニメーターによって個性は出ますので、改めて見返していただくのも面白いかもしれません。

――今回の撮影で一番大変だったところ、注目してほしいところはありますか?

伊藤 P:そうですね、人形はレゴシもハルもなかなか手間もかかっていますが、その甲斐あってとてもよくできていると思いますし、あとは地味なポイントですが背景にも注目してもらいたいですね。大規模な美術セットを製作することは難しかったのですが、噴水の広場のタイルは一枚一枚スタッフが手作業で貼り込んでいたり、噴水自体もいつもお世話になっているアシスタントの玄くんの力作なんですが、映像の中で効果的に使われているので画面の隅々まで見てもらえたらいろんな発見があるのかなと思います。

――玄光社さんから出版されている「SCULPTORS03」だったり、あと公式のメイキングムービーが上がっていたり、制作話は結構世に出ているものも多いのでそちらもぜひチェックしてみていただきたいですね!
 
 


次回は、こちらも人気のTVアニメ『おそ松さん』シリーズのENDムービーについて話したいと思います!お楽しみに!
ドワーフのプロデューサー。
参加作品: Amazonスタジオ「The Curious Kitty & Friends」(ライン・プロデューサー)TVアニメ「おそ松さん」シリーズ ED映像 「BEASTARS」OP映像/NETFLIX「リラックマとカオルさん」他。 将来の夢は庭付きの家で猫と暮らすこと。

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